アミュード株式会社は埼玉県を本拠とする、小袋調味料の製造販売企業です。設立1976年、年商14億円、従業員数70人(2022年3月時点)。
【アミュードの商品】
アミュードは小袋調味料の専業メーカーです。小袋調味料とは、食品、お弁当、給食に付属している、小さな袋に入った調味料のことです。
顧客は食品メーカーをはじめ、お弁当、給食、仕出しの会社など数百社に上ります。また、Yahoo!ショッピング、楽天市場、自社サイト等でのインターネット販売も行っています。こちらは1箱100袋単位で販売しており、個人のお客様のほか、業務用の利用もあるようです。
当社の小袋調味料は、ナショナルブランド製品の他、多数のオーダーメイド品があります。顧客と味を協議し、試作品を作り、その後、本製造、量産を行います。顧客総数は現在、数百社です。調味料の種別数は数千種類に上り、出荷個数は年間で1億袋を超えます。商流は顧客への直接販売と、商社を通す間接販売が半々です。調味料の形態は、大きく液体、練り物、粉末の三種に分かれます。基本的な製造工程は、加工済みの各種原料を仕入れて、それを自社工場でレシピに従い、混合(ブレンド)し、袋に詰めて出荷するというものです(※)。仕入れ原料の種別は400種類程度、仕入れ先は約200社です。
個人的に思うのは「私達の商品、色々な所で目にするな」ということです。一人の消費者として、近所のフードコートに行く、何かの機会に仕出し弁当を食べる、駅弁を買うなどすると、「あれ、この調味料、私達が作ったものだ」と気づくことが度々あります。小袋調味料という目立たない商品ですが、意外に皆様の生活の近くにあります。
*一部商品は、加工済みの完成品を仕入れた上、包装しなおして出荷する、という形態をとります。
MerQuriusは、当社の原料と製造物の情報を統括管理するための、業務基幹システムとして活用しています。情報は、原材料仕入れから、試作、量産、出荷、問い合わせ対応に到るまで、MerQuriusで一元管理します。工程毎の活用概況は以下のとおりです。
【原料の調達、仕入】
原料を仕入れるときは、仕入れ先に、原料情報の提出を求めます。この情報提出は、必ずMerQurius Netを通して行います。仕入れ先は、インターネットでMerQurius Netにアクセスして原料情報を入力し、最後に「提出(送信)」ボタンを押す。そうすれば情報は自動的にアミュード側のMerQurius Netに格納されます。これにより「情報の内容や形式が統一される」、「別添書類等も纏めて収集ができ、管理が容易」などの利点が生じます。
【試作品の製作】
試作品の製作にはQuebelを使います。顧客から「塩分控えめに」「もう少し甘く」など味について要望がある。それを実現する原料配合の割合をQuebelに登録する。その情報が、そのまま製造現場でのレシピになります。そして試作を何度か繰りかえした後、完成品に到ります。
【本製品の量産】
認可された最終試作品の製造情報は、すでにMerQuriusに格納されています。あとは、その情報通りに量産すれば良いことになります。「最終試作品と、量産品の内容が同じであること」を情報管理の面から担保できます。
【商品カルテの作成】
得意先に提出する商品情報は、得意先の指定に合わせて提出する必要があります。情報の書式、提出形式は、CSV、Excel、EDIなど顧客の指定に合わせます。今回、MerQuriusを導入するにあたり、提出先として多いインフォマートと外部連携を行い、今は感覚的に「ボタン一つ押すだけで」原材料表示や栄養表示の情報を正しい形で出力できます。
【成分表ありきの生産への対応】
時には新規案件で、「今まで小袋調味料の生産を依頼していた企業が、その事業を止めてしまった。いま、代わりに作ってくれる会社を探している。以前の、この成分表の通り、『同じ調味料』を作ってもらうことは可能か」と要望されることがあります。その場合でも、その成分表を参考に配合を入力すれば、ただちに試作、量産が可能です。
【原料情報の問い合わせへの対応】
世間で、何らかの食品事故が起きた際、顧客からは「問題となっている原材料は使われているか」と問い合わせが入ります。その場合もMerQuriusで検索すれば、直ちに正しい情報を探し当て、迅速、確実に回答できます。原料原産地や遺伝子組み換えの有り無しも即答できます。
このようにMerQuriusは、アミュードのあらゆる業務で活用しています。工程のつなぎ目で、ミスの温床となる転記が発生することもありません。情報管理に関わる業務時間は、従来比で半分から10分の1まで大幅に低減、短縮されました。MerQuriusは名実ともにアミュードの業務基幹システムです。
【システム概要図】
MerQuriusを導入する以前は、とあるソフトハウスがスクラッチ開発したシステムを使っていました。ただ、長年使い続けるうち、バグが頻発するようになり、このまま使っていると、管理データが消滅しアミュードの開発ノウハウまでも失いかねない、というくらい不安定になった。これはさすがに危ないということで、システム刷新に踏み切りました。
新たに導入する品質情報管理システムには次の8点を要件として求めました。
要件1:「業務の中核システム」として使えること
せっかく手間暇かけて入れ替えるからには、これから長年使っていける「業務の中核システム」まで確立しないと意味がないと考えました。そこに格納するデータはレシピでありノウハウ、つまりアミュードの財産となります。システムの全体構成は、「原材料仕入れ→試作→量産→品質検査→出荷」など、当社の業務の流れに合致している必要がある。どんな情報も、そのシステムを検索すれば直ちに分かる。そんな活用に耐えうる中核システムを確立したいと考えました。
要件2:「情報が一元管理できること、転記が発生しないこと」
「手入力は最小限にしたい」「転記は限りなくゼロにしたい」「情報を探すときも『その情報ならこのファイル』『あの情報はあのフォルダのあのファイル』のように分散するのではなく、一つのシステムを検索すれば情報が出てくるようにしたい」、と考えました。これを実現できる、全ての業務を一気通貫する仕様であることを求めました。
要件3:「誰でも使えること」
会社の業務システムとして「いつも使用」するからには、社員の誰でも使える簡単なシステムである必要があります。「簡単に使える」とは、一般に「ドラッグ&ドロップで直感的に使える親切設計」を指すことが多いようですが、日々の現場では、マウスだけでなく、キーボード入力が迅速に行えること、必要な情報が一画面にすべて表示されており、いちいちめくって進んだり戻ったりする必要がないことも重要でした。表面的な使いやすさだけでなく、業務を行う上での「本当の使いやすさ」があることを求めました。
要件4:「得意先の細かい要望に応えられること」
得意先からは、原材料情報の提出書式・形式をはじめ様々な要望があります。これに確実に対応できるシステムであることが必要でした。細かい要望もカスタマイズで柔軟に対応できることを求めました。
要件5:「データの移行を確実に行えること」
今回は、旧システムからのリプレースになります。まず「通常業務を続けながら、安全にシステムを切り替えられること」「過去に蓄積したデータを安全に移行してくれること」の2点を求めました。当社にはIT部門がないので、一連の作業は基本的に「信じて託す」ほかありません。信頼できる企業、製品を選ぶ必要がありました。
要件6:「人柄、積極性、信頼性」
営業担当者、技術担当者の人柄を重視しました。中堅・中小企業のシステム案件であっても、こちらの要望に耳を傾け、真摯に取り組む姿勢があること、当社の業務をよく観察し、それをどうシステムに落とし込んでいくか、共に考えてゆく一体感があることを求めました。
要件7:「法令対応が確実にできること」
食品関係の法令は数多くあり、食品会社はそれに準拠して業務、製造を行う必要があります。しかし法令は時勢に合わせ変更されることも多く、そこに確実に対応するのは、中堅・中小企業の人的資源だけでは困難です。
MerQuriusは大手食品メーカーへの導入実績が多くあり、法令対応も法令書作成での豊富な実績を誇る、中央法規出版株式会社との共同開発・運営のもと、サービス提供を行っているため万全です。つまり私たちはそのMerQuriusを使っていけば、ほぼ自動的に大手と同様の、法令に準拠したシステム環境、業務環境を実現できる。これは大きな安心感があります。
要件8:「価格の合理性」
これら要件にすべて対応した上で、価格が合理的であることを求めました。
当初の期待に十分、応えうる品質情報管理システムが完成しました。必要な情報はすべてMerQuriusで一元管理され、「何かあったらMerQuriusで調べる」ことが社内の慣習になりました。
今回のシステム導入で「情報を格納する、参照する」という点で、中核システムを確立できたと考えます。今後は格納、参照可能になった情報を使い、どう業務を改善していくか、より積極的な用途展開を進めていきます。
MerQuriusの導入で、転記や調査などの業務が大幅に削減され、現場からも好評です。ただ一方で、「今までは、入力間違いをしても遡ってすぐ直せた。でも今は、いったん承認された入力はロックされるので、手続きをふまないと再修正できない。これは少しめんどう」という声もありました。
しかし、情報管理の観点で考えれば、あとから簡単に修正ができないのはむしろいいことです。この部分は少し不便でもいい。成分表示に重大な責任を持つ食品会社の管理システムは、「少しかたくるしい」くらいでちょうどよいと思います。
また再度申し上げますが、やはり親身になり一体感をもって取り組んでくれる会社を選ぶのがよいと思います。そうした会社を見分けるには、「製品要件だけではなく、こちらの業務の話についても、きちんと聞いてくれるかどうか」も重要だと思います。
アミュードは、ひきつづき良い小袋調味料を開発・製造し、お客様の期待に応え、選ばれ続ける会社であるべく尽力していきます。JFEシステムズにはそうした当社の取り組みを優れた技術、製品、サポートを通じ支援いただくことを希望いたします。今後ともよろしくお願いします。
- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。