1854年、安政元年の創立以来、信州・長野県で160年間みそ造りを続けてきた、日本を代表するみそメーカーである。現在14代目のマスコットキャラクター「マルコメくん」は、CMなどで消費者に広く親しまれている。近年は液みそ、ディップソースなどみその新しい食べ方の提案も積極的に行っている。また、世界的な和食ブームを受け、海外展開にも力を入れている。
マルコメでは2010年にMercriusを導入し、「商品・原料情報管理」と「商品開発支援管理」に利用しています。利用者は品質保証部、開発部、営業部、生産部門、資材購買部門と多岐にわたり、約50名が活用しています。
みそ造りの特色は
の2つではないかと考えます。
みそ造りは、「元みそ」と呼ばれる基礎半製品の製造から始まります。元みそは、大豆・塩・米の各原料の種別や配合比率、熟成期間に応じて、「白みそ・料亭の味・二年熟成・特選」等、25種類の元みそに分類されます。
元みそは、一定の熟成期間を経て蔵出しされた後、加工段階・調味料加 工段階(半製品段階)を通り、最終的に約600種類の最終商品になります。加工段階は最高で5階層、調味料加工段階は最高で3階層存在しています。
例えば「特選」という1つの元みそからは、「一休さん・マルコメくん・液みそ信州」など、実に131種類もの最終商品が作り出されます。
みそ造りは1つの元みそが何層もの半製品の加工段階を経て、多種多様な最終商品に枝分かれしていくのです。
1次加工・2次加工と加工度合が進むにつれ、管理すべき半製品の数が次々に増えていき、そのため、商品・原料の情報管理が非常に複雑です。
現在マルコメでは、リニューアル品を含めて毎年120~130種類の新商品を開発しています。みそ専業メーカーということで商品種類が少ないと思われがちですが、実はアイテム数が多く、商品の入れ替わりも激しいのです。
今後、消費者の細分化したニーズにお応えしていく為に、商品のアイテム数の増加や、新旧アイテムの入れ替わりもさらに激しくなっていくでしょう。これは商品・原料の情報管理においても、さらに複雑さを増していくことを意味しているのです。
Mercriusを導入する前、原料情報は「紙の原料規格書」と「グループウエアによる簡易データベース」を使って管理していました。
具体的には、原料規格書を原情報とし、「頻繁に活用する情報」を規格書から簡易データベースに手入力で転記し、流通各社様からのお問合せには、そのデータベースを検索して回答するという方法で対処していました。
しかし、2008年に「事故米の転売事件」が発生し、当時はお客様からのお問い合わせに対し十分な対応を行う事が出来ませんでした。 従来の方式では情報管理が不十分であることを痛感させられたのです。
事故米転売事件が報道されると同時に、「マルコメのみそには事故米は使われているのか、いないのか」という趣旨のお問合せが殺到しました。
品質保証部の電話は朝から鳴り続け、それに加えてメールやFAXもどんどん舞い込んできました。しかも、どのお問合せも、「1時間以内の返答を求む」という緊急性を要するものでした。
幸いにも事故米を転売していた会社とマルコメは取引関係がなかったので、みその主原料の部分については「事故米は使われていません」とただちに回答できましたが、調味料への回答が遅れてしまいました。
一部の調味料は、原料に米が使われていたからです。 今度はマルコメが調味料メーカー様に、「調味料に事故米は使われているのか、いないのか」を問合せる事になります。この時、
(1) マルコメが使っている調味料のうち、「原料に米が含まれるもの」をリストアップする。
(2) 更に、その中から「国産米を使っている調味料」を絞り込む。
といった2つの作業を行うことで、調味料メーカー様への問合せは的確化・迅速化できるはずでした。
しかし、調味料の原料情報は非常に複雑で情報量が多く、そのために先に述べた「簡易データベース」にはほとんど登録されていなかった為、リストアップ作業は結局、原料規格書の紙束を手作業でめくりながら行うしかありませんでした。
この他、「中国冷凍ギョウザ事件」の際も、お問合せ対応は同様に多忙を極めました。元みその原料となる米、塩、大豆のことなら割合迅速に回答できましたが、調味料や即席みそ汁具材の確認に手間取りました。
こうした食品事故のお問合せ対応においては、正確性と迅速性の両方が重要です。しかし、当時のマルコメの情報管理体制では、迅速性の方が十分に担保できていませんでした。
以上の経験からこれらの課題を解決する為、品質保証部が主導で「商品・原料情報管理の強化」を会社に提案しました。経営陣からも「そうしたシステムは確かに必要だ」という声が上がり、「商品・原料情報管理システム」の導入が決定、2009年初めより候補システムの選定に入りました。
いくつかのシステムを調査し、「システムA」、「システムB」と「Mercrius」の3つが候補として残りましたが、システムA・Bは早い段階で検討対象から外しました。
まず「システムA」は、流通各社で多くの導入実績がありましたが、メーカーでの導入実績は少なく、機能や仕様も基本的に流通向けでした。今回のシステム導入では、「商品・原料情報管理」という品質保証部向けの用途のほかに新商品の原料配合比率の計算など開発部向けの「商品開発支援」という用途を想定していた為、検討対象から外しました。
次に「システムB」は、基本機能がMercriusに比べ弱く、完全なパッケージ製品でカスタマイズ性が低かったため、やはり検討対象から外しました。 最後に残ったMercriusは、
- 食品メーカーでの導入実績が豊富にある
- 機能や仕様もメーカーでの利用を前提にしたつくりである
- 開発支援の機能も豊富である
- パッケージ製品というより、むしろモジュールの集合体であり、最初からカスタマイズを前提とした仕様になっている
等の理由により、マルコメの求める仕様に良く合致していました。
以上のような経緯でMercriusだけが一次選定を通過し、更に詳細な仕様を確認する為、JFEシステムズに問合せを行いました。
原料規格書
製品配合
※1次、2次、3次と3工程ある場合、2次混合の配合変更情報が、3次の配合計算へ自動展開される。
原料表示作成
製品規格書関連
商品情報出力フォーム
その他
上記の様に、かなり詳細な要求仕様を提出しましたが、JFEシステムズからは満足のいく回答が返ってきました。
これを基にさらにマルコメ社内で検討した結果、Mercriusの正式採用を決定。導入期間を経て、2010年5月から運用を開始しました。
Mercrius導入後に何度か、流通各社様からのお問合せに緊急回答しなければいけない場面が発生しました。導入前は、4人で紙をめくりながら3時間かかっていた調査作業が、担当者1人がMercriusを検索し、1分で即時回答することができました。
つまり回答に要する時間が、『4人で3時間』から『1人で1分』に短縮されたことになります。
マルコメのお客様からのお問合せに対する回答スピードは、大きく改善されました。
また開発部門での配合表計算業務は、「3次配合数値を変更の際の4次配合、5次配合への変更のシミュレーション」が、「Mercrius」でほぼ自動的に、かつ短時間で実行できるようになりました。従来はExcelの手作業で時間をかけて実施していた為、計算スピードや結果の精度は格段に向上しました。
システムを導入する時の考え方として、
「パッケージ製品を導入し、仕事のやり方をシステムに合わせて変更する」という方法と、
「カスタマイズ性の高い製品を導入し、システムの方を自分たちに合わせて変更させる」
方法の二つがあります。マルコメでは、後者を選びました。
なぜならば、システム導入を機に現状業務の問題点を洗い出すと同時に、マルコメのあるべき業務の姿を描き出し、それにシステムを寄り添わせる形で導入することで、目的であった「商品・原料情報管理」のみならず、理想的な業務運用が実現できると考えたからです。カスタマイズ性の高いMercriusは、その要望を見事に実現してくれました。
歴史ある企業として自社の独自性を保ちつつシステム化を進めたいと考えておられる企業の皆様には、Mercriusの検討をお勧めします。
Mercriusを導入した事で、マルコメの情報管理体制、開発支援体制及び、お客様からのお問い合わせに対する回答の迅速性は大きく改善されました。
JFEシステムズには、今後もMercriusを製品、サポートの両面でより一層進化させていただき、マルコメの「おいしいみそづくり」と「食の安心・安全への取り組み」を支援していただくことを希望します。 これからもよろしくお願いいたします。
- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
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