導入事例
適切な食品表示の作成やお取引先様からのお問い合わせなど、システムを活用して、迅速、正確、確実な対応を行うためにMerQuriusを導入しました。
東洋水産株式会社 品質保証部 課長 八巻 洋恵 氏(写真右)、西川 知美 氏(写真中央)、吉澤 幸弘 氏(写真左)にMerQurius、P2Aiを導入した経緯とその効果について、詳しく聞きました。
東洋水産株式会社は、水産加工をはじめ「マルちゃん」ブランドで知られる総合食品メーカーです。「マルちゃん正麺」などの即席袋麺、「赤いきつねうどん」「緑のたぬき天そば」などの即席カップ麺のほか、「マルちゃん焼そば」のチルド麺や魚肉ハム・ソーセージ、米飯、フリーズドライスープ、風味調味料など様々な食品を製造・販売しています。海外ではMARUCHANブランドを展開しており、特に北米ではアメリカで60%以上、中米メキシコで80%以上のシェアを占めています。
年商4,890億円、従業員数4,738人(いずれも連結、2024年3月時点)、創立1953年。関係会社31社(海外9社含む)。
東洋水産ではMerQurius(Mercrius, Quebel, MerQurius Net 原料規格書サービス)、AI校正アシスタントP2Ai(ピーツーアイ)を使って商品情報、配合情報、原材料規格書、包材情報を統合管理しています。概要は次のとおりです。
【Mercrius - 商品情報管理】
Mercriusを使って商品情報を統合管理しています。
弊社は食品会社として比較的、商品点数が多い部類に入ると考えます。たとえば主力事業の即席麺では、代表的なロングセラー商品である『赤いきつねうどん』『緑のたぬき天そば』のほか、消費者の多様な嗜好に応えていくため、様々な商品を展開しています。
一つの商品が細分化することもあります。例えば『赤いきつねうどん』は地域の味の好みに合わせて“だし”の原料や配合を変え、全国で4種類のつゆの味を展開しております。また、「でか盛」「ミニカップ」などのサイズ展開や、『赤いきつね焼うどん』などの派生品、さらには『赤いたぬき天うどん』など企画商品も生まれて、商品の管理対象数は増えていきます。
また同一ブランド商品のフレーバーや、有名店、キャラクターとの「コラボ商品」、そして「地域限定商品」やお取引先様の「プライベートブランド商品」も加わり、商品点数をさらに押し上げます。
このように商品が細かく分かれ、新商品、終売商品が日常的に発生する環境では、商品情報を確実に管理していくのは容易ではありません。
この業務を確実、迅速かつ、非属人的に進めるために商品情報データベースMercriusを導入しました。
Mercriusには導入以来、すでに3,000件以上の商品情報を登録しています。
Mercriusは弊社の商品情報を管理するための、重要な基幹システムです。
【東洋水産の商品】
【Quebel - 配合情報管理】
開発部門が作成する商品の配合情報(レシピ)はすべてQuebelを使って一元管理しています。
【MerQurius Net - 原材料規格書管理】
弊社は商品の原材料を、多くのサプライヤー様から調達しています。その際サプライヤー様は、MerQurius Netを使って原料規格書を作成し、弊社に提出します。これにより原料規格書の書式統一と一元管理が実現します。
【P2Ai - 包材版下デザイン校正支援】
AI校正アシスタントP2Aiは、商品包材の版下段階で一括表示や注意表示などの文字情報が原稿と相違ないことやイラストや絵文字などのデザイン部分の位置修正などといった校正作業に活用しています。原稿との文字情報の比較、デザイン部分の修正前後の比較など、人の目視確認だけでは見逃してしまいそうな確認作業に、作業の効率化、表示ミスの防止のために導入いたしました。
【東洋水産のシステム概要図】
弊社の商品は一般に、「商品企画」→「商品仕様の開発」→「包材デザインの作成」→「工場で生産」という過程を経て「販売」となり、市場に出回ります。販売に際しては「お取引先様や一般のお客様などからのお問い合わせ対応」という業務も発生します。この仕事の流れの中でMerQuriusを次のように活用しています。
「商品企画」
企画部門が、「次はこういった商品を作りたい」と企画、発案し、それを開発部門に伝えます。このとき「開発依頼書」が作成されますが、現在、これも商品情報としてMercriusで作成、保管しています。
「商品開発」
開発部門はこの開発依頼に即して、商品の開発を始めます。その過程において、開発部門と企画部門で開発会議が重ねられますが、その際のやりとりも「商品情報の一つ」と見なし、その開発経過をMercriusに入力しています。
開発部門は、時に抽象的なこともある企画部門からの依頼に対し、開発会議での意見を取り入れつつ試行錯誤を重ねながら、企画部門と思い描く商品に向けて、工場での製造を踏まえて「配合表(レシピ)」を仕上げていきます。レシピ情報は、すべて配合情報を管理するシステムであるQuebelに登録、保管されます。
レシピの開発は、これまでの商品の配合情報を参考にすることも多く、また、商品のリニューアルの際には既存配合に改良を加えることになります。こういった場合には、参考としたい商品や既存品のレシピをすばやく検索する必要がありますが、この時もQuebelが大いに役に立ちます。
「一括表示情報の作成」
商品の包材には、原材料表示や内容量、製造者情報などのいわゆる一括表示や召しあがり方、注意事項などの情報を記載する必要があります。この表示作成には品質保証部門が関わります。その作業の際、品質保証部門は、開発部門がQuebelに入力したレシピ情報を使用します。
包材に表示する事項については、食品に関する各種法令に準ずる必要がありますが、最近ではこれら法令は思いのほか多くの頻度で改正されています。法令改正に対しては、担当者がその内容を理解し、注意をして作業にあたることで間違いのない表示作成に対応しますが、Quebelもアップデートによって法令改正へ対応されることで、原材料表示の作成における間違いや思い込みなどのリスク低減へ大きく貢献しています。
尚、QuebelはMerQurius Netを通じてサプライヤー様から提出いただいた原材料規格書とデータ連携されており、最新の原材料情報をもとに原材料表示を作成することができることにも大きなメリットを感じています。
「包材デザインの作成」
商品開発では、レシピや商品仕様開発と並行して「包材デザインの作成」も進められます。
包材に記載するキャッチコピーなどでは、企画部門はインパクトのある表現を使いたがる傾向がありますが、品質保証部門としては、それを「許容範囲」にとどめる必要があります。ここでは主に版下の確認作業を通して企画部門と開発部門、品質保証部門などの間で議論、やりとりが発生しますが、そのコメントが記載された版下もMercriusに保管するようにしています。
「包材デザインの校正」
商品の包材の制作作業は、企画部門や生産管理部門が、デザイン会社や印刷会社と協力して進めますが、このとき重要になるのが、何度も修正を重ねる中で、デザインや表示に誤りが生じないよう確認・点検する「校正作業」です。
従来、この作業は「人の目により、細心の注意を払う」という形で行ってきました。しかし現在はAI校正アシスタントP2Aiを導入したことによってシステムによるほぼ自動的な照合や校正を併用することで、効率と正確性が大きく向上しました。
「製造工場 生産管理システムとのデータ連携」
工場が商品の製造を行う際には、既存の生産管理システムにあるレシピ情報を利用します。従来、このレシピ情報は開発部門で転記・入力を行っていましたが、Quebelとデータ連携をすることにより転記ミス、入力ミスの防止と作業の省力化を図りました。
「お客様からのお問い合わせへの対応」
お取引先様などお客様から商品に関するお問い合わせがあったときにも、Mercriusを活用します。お問い合わせは多くの場合、使っている原材料の内容やある特定の原材料を使用している製品、健康被害などの報道が出た際には、そこに該当や関連しそうな原材料や製品に関するもの等になります。そのような問い合わせには品質保証部門が対応を行いますが、このときMercrius、Quebelなどを検索、参照します。
MerQuriusの導入前には紙の資料や既存の社内システムを使っていましたがMerQuriusも加わったことで迅速性、正確性が大幅に向上しています。
「MerQuriusは品質保証業務でも活用しています」
八巻 洋恵 氏
「大量の商品情報をMercriusで管理しています」
吉澤 幸弘 氏
「システム化の必要性を社内に示しました」
西川 知美 氏
MerQuriusを導入した目的は、大きく「原料規格書収集業務の負荷軽減」「商品開発業務(配合表作成関連)の効率化」「商品情報の一元管理、常に最新の情報を把握できるデータベースの構築」「食品表示関連法規の改正に迅速・正確に対応するための仕組みづくり」「お取引先様向け商品カルテの効率的な作成」などです。
実はシステム導入に対し、社内には懐疑的なところもあったと思われます。というのも従来のやり方であっても、仕組み、各社員の経験やスキル、教育などにより、商品情報管理や問い合わせ対応は大過なくこなせていたからです。これといって問題となっていないものを、わざわざ変更する必要はない、このままでも良いのでは、というところだと思います。
ただ、同時に、外部環境は厳しい方向に変わり続けている中で、これまで何とかなっていたとしても、このままでも大丈夫とはいいきれないといった危機感のようなものもありました。
たとえば、食品事故が起きたときのお取引先様からのお問い合わせ一つをとっても、以前はお問い合わせの返答に数日を要することも普通にあったという時間感覚でした。しかし現在は数時間以内に回答を求められることもあり、また求められる情報の量、範囲、精度も以前より増しています。
さらに法規改正への対応に多種多量の商品の包材変更を正確かつ確実に進めることや、トラブル対応においてもこれまで以上に迅速に商品やその原材料の情報を検索・抽出するといったことも必要とされるようになりました。
こうして社内や経営層の理解もあって、商品・原材料の情報管理をシステム化することが決定し、候補の選定を行いました。
まっさきに必要とした要件は「原材料表示を、関連法規に基づき正確、効率的に作成できること(それを支援する機能があること)」でした。多くの商品が発売される弊社において、一括表示作成の確実性と法令遵守をしっかりサポートしてくれる、そんな製品を求めました。この点では、中央法規出版と提携しているJFEシステムズのMerQurius(Quebel)が、傑出していました。
またMerQurius Netは弊社の業務効率化の他にもサプライヤー様にもメリットがあることが期待され、お取引先様向けの商品カルテ対応としては外部サイト連携機能がありました。
また、企画、開発、品質保証、生産管理など各部門が日々の仕事の中で日常的に使うツールとして、無理なく使いこなせる、そんなシステムを求めました。大手食品企業様での導入実績が多くあることも選択の一因となりました。
以上のことからMerQuriusが東洋水産の求める要件をもっともよく満たすものとして導入に至りました。
MerQuriusは、今や各部門の「いつものシステム」として定着し、業務の迅速化、効率化に大きく貢献しています。後から導入したP2Aiについては「誤表記のまま製品化されかねなかったのを、未然にくいとめた」という事例が、すでに複数件、報告されています。システム利用の現場からは「MerQurius、P2Aiなしでは成り立たない」という声も聞こえています。
MerQuriusはパッケージのシステムでありながら拡張性がありカスタマイズも可能です。弊社では、原材料規格書の承認フローや商品開発に関する一部の業務フローなどをシステムに盛り込みたいと相談したところ、丁寧に対応していただけました。商品情報管理のシステム化でやりたいことやアイデアがある場合には、まずは相談することから始めたらよいと思います。
東洋水産は今後も“食を通じ、みなさまに笑顔をお届けしたい”そんな想いを込め、品質とおいしさにこだわった食品づくりに取り組んでまいります。JFEシステムズにはそうした弊社の取り組みをよりよい製品、技術、サービスを通じて継続支援いただけることを期待いたします。今後ともよろしくお願いします。
- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。